2019/08/04

市民の誰もが立ち寄れる事業創発拠点

とかちのやりたい実現カフェ「LAND」

(北海道帯広市)

  


 

“とかちのやりたい実現カフェ”に込めた想い

 
 食糧自給率が1000%を越える十勝地域では、近年、新しい仕事づくり、経営者・新事業の創出を目指して、「十勝イノベーションプログラム」をはじめとしたさまざまなプログラムが進められ、地域の人々が主体となったビジネスが数多く生まれていました。一方で、参加者が日常的に交流を図れる場をつくり、プログラムをより活性化させていくことが、求められるようになっていました。
 

 
 そのようなときに、このプロジェクトの依頼をいただきました。このような場合、特定の起業家を目指す人々が集う、「起業家カフェ」のような施設がつくられがちですが、私たちはまず、それが本当にエリア全体の起業マインドを創発しうるのかという疑問を持ちました。年齢や立場に関わらず、全ての十勝の人々には“小さなやりたい”ことが潜在的にあるはずです。とかちのあまねく人々が気軽に立ち寄ることができ、それらを実現させてあげられる“場”をつくることこそが、十勝の新しい仕事づくりを根底から支えるものになり得ると考えました。
 

  

20メートルの奥行きにつくられた6つのスペース

 

 
 スペースを構える場所として決定したのは、帯広駅前のメインの通り、まさにそこから街がはじまる“まちの入口”に建つビルの1階でした。間口約6.5メートル、奥行き約20メートル、約200平米の空間に、私たちは、土間スペース、巨大なキッチンカウンターを備えたフロアスペース、一段上がった喫茶スペースに、一番奥には靴を脱ぐスペース、その裏にはDIYも可能で籠もることができるスペース、奥には完全個室の打合せ室など、いくつもの個性的なスペースをつくりました。
 どれも、個別に使うことも、組み合わせて使うことも可能です。また、利用者の皆さんに想像力豊かに使い方を見立ててもらえるように、それぞれの空間や家具のスケール、質感、色に至るすべてを、設計者の石井大吾さんと共に決定していきました。ここでも「喫茶ランドリー」と同じく、ここで何かをやってみたくなるデザインの要素をそこかしこに散りばめています。
 

 

空間の使い方と連動したネーミングとサイン計画

 
 今回のプロジェクトでは、ネーミングやロゴデザインについても監修させていただきました。同時にそれらのサインをインテリアの中で、どのように機能させるのか、それが利用者の能動性をどう発露させうるのか、というところまでを考慮しました。
 

 

 

 

 
 今回のプロジェクトとは、アルプス技研創業者の松井利夫最高顧問が帯広市に寄せた寄付金の一部を活用してつくられました。スペースのデザインはもちろんのこと、ネーミングやロゴ等については、松井最高顧問や米沢則寿帯広市長との対話も経て、つくられたものとなります。
 

施設を運営していく全職員が「喫茶ランドリー」で研修

 
 ハードやソフトの整備だけでは、その場にさまざまな出来事を起こしていくことは、ほぼ不可能と私たちは考えます。つまり、その場にいらした人々と、具体的に、どのような感じでコミュニケーションを自然に取り合うのか、その過程で、ひとの能動的な側面を見つけ、引き出してあげるのか。その部分の人間的なやりとりなしに、場の成熟はあり得ません。そこで、自社で運営している「喫茶ランドリー」で、「LAND」で働くことになる全財団職員が研修を行い、現場でのお客さんとの交流を体現することで、「LAND」でのコミュニケーションのありかたを考えるきっかけとしていただきました。
 

 

とかちの人を、とかちのまちを変えていく拠点として

 
 2019年7月31日に関係者向け内覧会が、8月4日に市民向けオープニングイベントが開催されました。その翌日から、通常営業となり、さっそくさまざまなイベントごとに使っていただいたり、またカフェとして利用いただく方も少しずつ増えてきているそうです。日頃の様子は下記SNSでも確認をすることができます。子どもたちと一緒に来る地元のママさん、周囲で働くサラリーマン、帯広の大学生たち、そして起業を目指す人たち、さまざまなとかちの人々が、日常的にここに居て、そして少しずつやりたいことを実現していく。その積み重ねあら、新しい十勝のカラーが生まれてくることでしょう。
 
事業創発拠点「LAND」インスタグラム
https://www.instagram.com/land.tokachi/
 

事業主体:財団法人とかち財団
コンサルティング:株式会社グランドレベル
設計・監理:石井大吾デザイン室一級建築士事務所
施工: 株式会社ヨシダホーム
家具・建具:グリーン商会
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ground Level × Acttiveness